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内的自立‐外的自立マトリクスで考える【自立を考えるシリーズ4】
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今でも色あせない内容の記事ではありますが、「自立」についての、より新しい内容を別サイトで公開していますので、この記事とあわせてお読みください。
自立とは何か?―10年間熟成させた“自立”の意味
前回までの「自立を考えるシリーズ」では、主に「内的自立」、「外的自立」という考え方について説明してきました。
今回は、この「内的自立」、「外的自立」という考え方をより有効に活かすために、「内的自立」と「外的自立」を組み合わせて考えてみたいと思います。
自立を考えるシリーズの記事一覧
内的自立‐外的自立マトリクスとは?
そのために、マトリクスという考え方を利用します。(もちろん、マトリクスを使わなくても考えることはできますが、マトリクスを使うと、より視覚的に理解しやすくなります。)言葉で説明しても、わかりづらいと思いますので、まずは下の図1を見てください。
この図1が「内的自立‐外的自立マトリクス」です。
内的自立‐外的自立マトリクスでは、縦横にそれぞれ、
内的自立: | 自己責任の意識を持ったうえで、自分の意志に従って行動や判断などを決定することができること |
外的自立: | 現実的な選択肢を複数持っていること |
という内的自立と外的自立の条件を割り当てています。
(図では、あまりゴチャゴチャしないように、文を省略してあります。)
そしてさらに、内的自立と外的自立というそれぞれの項目について、自立している状態と、自立していない状態に分けてあります。
簡単に言えば、図の上半分の領域を内的自立状態、下半分の領域を内的依存状態、右半分の領域を外的自立状態、左半分の領域を外的依存状態というように分けて、それらを組み合わせて考えるということです。
このようにして考えることによって、
- 内的に自立していて、外的に自立している状態
- 内的に自立していて、外的に依存している状態
- 内的に依存していて、外的に自立している状態
- 内的に依存していて、外的に依存している状態
という4つの状態を、過不足なく、視覚的にわかりやすく理解することができると思います。
このように、縦横に分けて表にして考える方法をマトリクスといいます。特に、経営学の分野で頻繁に使われる考え方のようで、経営関係の本を読むとよく目にします。
マトリクスについての詳しい説明については、下記の記事で丁寧に説明されているので、興味がある場合は参照してみてください。
10分でわかる「マトリックス」(三省堂Word-Wise Web)
マトリクスに内的自立、外的自立の特徴を書き込んでみる
では、前回までの復習も兼ねながら、マトリクスという考え方に馴染んでいただくために、マトリクスに内的自立、外的自立の特徴を書き込んでみましょう。ただし、マトリクスという考え方に慣れていて、内的自立・外的自立の特徴も覚えているというような場合は、この部分は飛ばして、次に進んでいただいても構いません。
まずは、内的依存と内的自立の特徴からです。内的自立と内的依存の特徴は次のようなものでした。(「内的自立とは?【自立を考えるシリーズ2】」を参照)
また、ここでは分かり易さのために、自立状態を青、依存状態を赤で表したいと思います。
内的自立状態の人の特徴
- 健全な人間関係を築くための基本的な要素のひとつが身についている
(内的自立だけで十分なわけではなく、自分の意志・責任であっても、人に嫌がらせを繰り返すようなことをすれば、当然の結果として関係は悪化する。ただし、内的に自立している人であれば、良い関係を築こうと思えば、自分の責任を認め、改善のための努力ができる。)
- 他者に助言を求めるような場合でも、内面的なレベルで支配・被支配という関係にはならずに、対等な関係を築くことができる
(例えば、「○○さんが、△△というアドバイスをくれたけれども、その通りにするかどうかは自分で決めることだから、アドバイスを受け入れた結果(あるいは、受け入れない結果)は自分の責任だ」というような態度をとることができるということ)
- 周囲の環境がどうあろうと、自分の意志・責任で判断・行動などすることができる非常に強力な存在
- ものごとに対して、自分から影響を与えることができ、自分の判断・行動などに関する決定権は自分で持っている
内的依存状態の人の特徴
- 健全な人間関係を築くことが出来ない
典型的には、次のような例が考えられる- 自分の意志・自己責任で決めたという意識がないので、期待通りの結果が得られないと、責任を他者に押し付ける
- 責任を押し付けられて嬉しい人はいないので、恨みを買うことになる
- 他人に責任を押し付けている側も、責任は他者にあると考えているので、被害者意識を持つことになる
- お互いに嫌な思いをして、人間関係は悪化する
- 酷い場合には、「人の意見がないと決められない状態」に陥ってしまい、「支配する側」、「支配される側」というゆがんだ関係を生むことにもある
- 周囲の環境が変わらなければ、状況は変わらないと考えているので、環境に振り回されるだけの無力な存在になってしまう
- ものごとに対して、自分から影響を与えることは出来ず、自分の判断・行動などであっても決定権は環境に委ねられることになる
また、内的自立‐外的自立マトリクスでは、上半分が内的自立の領域で、下半分は内的依存の領域ですから、これらの領域に内的依存と内的自立の特徴を書き込んでみます。(マトリクスに書き込む文章は省略してあります。)
では、同様に外的自立、外的依存についても、その特徴をマトリクスに書き込んでみましょう。
外的自立、外的依存の特徴は次のようなものでした。(「外的自立とは?【自立を考えるシリーズ3】」を参照)
外的自立状態の人の特徴
- 多数の選択肢を持っている状態なので、外的なレベルでは、自由に選択することができ、簡単には支配を受け入れざるを得ないような状況には陥らない
- 多数の選択肢を持っている状態なので、事故や不測の事態が起こってしまい、多少の選択肢を失ってしまっても、大きな影響を受けることはない
外的依存状態の人の特徴
- 選択肢が少ない状態なので、選択の自由はなく、悪い場合には依存対象による支配を受け入れざるを得なくなることもある
- 選択肢が少ない状態なので、事故や不測の事態で、ひとつでも選択肢を失うと、大きな影響を受ける
次に、内定自立-外的自立マトリクスでは、左半分が外的依存の領域で、右半分が外的自立の領域ですから、これらの領域に外的依存と外的自立の特徴を書き込んでみます。(マトリクスに書き込む文章は省略してあります。)
図2、図3を見ていただければ、前回までに説明してきた内的自立と外的自立についての知識と、内的自立‐外的自立マトリクスの関係を理解していただけると思います。
また、内的自立を目指すべきかどうかということについては、「内的自立とは?【自立を考えるシリーズ2】」で、次のように書きました。
内的自立を目指すべきか?
- 「自分の意志で決めているわけじゃない。」、「自分の責任じゃない。」と思っていたとしても、より深い意味では、「内的に自立した態度をとるという選択をすることも出来たにも関わらず、内的に依存した態度をとるという選択をした」ということになる
- 内的に依存した態度をとれば、それ相応の結果(「人間関係の悪化」、「ものごとに対する影響力を失う」など)を引き受けなければならない
- 内的に自立した態度をとるように心がければ、当然、その結果は返ってくる
- どちらを選ぶかは、本人の自由であり、責任でもある
(もちろん私は、内的自立を目指すことをお勧めします)
このように、私は、マトリクスの上側・下側のどちらにいるのも本人の自由ではあるけれども、その結果を考えれば、上側にいることを目指したほうが良いと考えています。
また、外的自立については、「外的自立とは?【自立を考えるシリーズ3】」で、次のように書きました。
外的自立を考える場合のバランスの重要性
- 選択肢は必ずしも多ければ良いというものではなく、その選択肢のために必要な時間・エネルギー・お金などと、その選択肢の必要性のバランスをとることが重要
- 同様に、選択肢は多ければ多いほど良いというものではなく、自分の気持ちを尊重しつつも、現実とのバランスをとることが重要
- バランスをとるうえで、長期的な視点を持って考えることが重要
(一言で言えば、「その選択肢を選択することは、将来の選択の幅を広げるだろうか?」という質問に答えること。)
このように、外的自立については、一概に現実的な選択肢を増やせばよいというものではなく、バランスを考えることが重要になってきます。
まとめると、内的自立‐外的自立マトリクスの上側の領域(内的自立の領域)で、左右(外的依存と外的自立)のバランスをとっていることが重要ということになります。
さて。これで初めてマトリクスという考え方に触れたような方でも、マトリクスという考え方がどのようなものなのか理解していただけたと思います。
実際に内的自立‐外的自立マトリクスを使ってみる
では最後に実践例として、4つの領域にはどのような例が当てはまるのかについて考え、領域ごとに自立と自由の関係を考えていきたいと思います。ここでは、例のごとく、経済的な自立を例に考えていきたいと思います。(ここでは、経済的という言葉を、収入を得るという意味だけに限定して考えます。)
この場合、内的自立・外的自立という言葉はそれぞれ、「現状を受け入れて、自己責任の覚悟を持ち、自分の意志で収入を得るための行動や判断を選択できること」、「収入を得るための現実的な選択肢を複数もっていること」を表します。
また、この状態以外の状態が内的依存・外的依存です。
このようなときに、内的自立‐外的自立マトリクスの各領域には、例えば、次のような例が当てはまります。
- 内的依存-外的依存
サラリーマンとして働いるが、仕事はいつも適当だったので能力は低く、年もとってしまっている。今の仕事を失ってしまったら、次の仕事は見つからないだろうし、特に副収入を持っているわけでもない。(外的依存)
本人は、仕事がいつも適当で能力は低くなってしまったのは、会社がやる気を引き出してくれないからだと責任を会社に押し付けている。また、自分のキャリアプランについては、自分で考えることをせず、他者の言う通りにするばかりで、その責任が自分にあるという意識は持っていない。(内的依存)
- 内的依存-外的自立
父親が有力者で、多くの企業から引く手あまたで、本人もどれを選んでもいいかなと思っていた。(外的自立)
友人がその中の一社を勧めるので、たいして調べもせずにに入社したが、彼にとってはその職場が気に入らないものだった。彼は、「よく調べもせずに入社してしまったこと」、「友人のアドバイスを受け入れるという選択をしたこと」は棚に上げて、その会社を勧めた友人に責任を押し付け、恨み続けている。(内的依存)
- 内的自立-外的依存
サラリーマンとして働いるが、仕事はいつも適当だったので能力は低く、年もとってしまっている。今の仕事を失ってしまったら、次の仕事は見つからないだろうし、特に副収入を持っているわけでもない。(外的依存)
本人も、この状態には不安を感じているが、それは今までしっかり仕事をしてこなかった結果だと認め、心を入れ替え、真面目に仕事をしたり、勉強にも取り組んだりして、能力を高める努力をしている。また、副収入を作るための努力もしている。(内的自立)
- 内的自立-外的自立
本業での収入のほかに、副収入を持っている。また、本業でも能力が高く、今の仕事を失ってしまっても、すぐに次の仕事を見つけることができる。(外的自立)
仕事では、他者からのアドバイスを受けながらも、最終的には自分の責任という意識で判断している。何か問題があっても、自分の中に原因を見出して、それを改善する努力をしている。(内的自立)
では次に、この例を用いながら、それぞれの領域ごとに自立と自由の関係について考えてみます。
- 内的依存-外的依存
この状態では、現実的な選択肢がひとつしかないので、選択の余地がありません。外的なレベルでは自由がないと言えるでしょう。キャリアプランについても、自分で決めることができず、他者の判断に頼りきりなので、内的なレベルでも自由がない状態です。
また、この人は自分で決めることができない状態なので、現実的な選択肢を増やすために努力するという選択も、自分からすることはできません。
ですから、依存対象が決めてくれない限り、自力で外的に自立するようなことはできません。
- 内的依存-外的自立
たくさんの選択肢をもっているので、外的なレベルでは自由な状態です。
しかし、この人の場合は、責任を押し付ける対象が居なければ、ものごとを決定できない状態です。なぜならば、自分で職場を決めたと認めることは、その気に入らない職場に居ることは自分の責任だと認めることで、それはとても辛いことだからです。(もちろん、このような時こそ、過去を反省して内的自立に近づくチャンスであることは言うまでもありません。)
結局のところ、現実的な選択肢はたくさん持っていても、責任を押し付ける相手が居なければ決めることができないので、あまり自由ではないことがわかります。
また、このような態度を仕事でもしていれば、やがて信用を失ってしまい、いくら父親が有力者だと言っても、だれも相手にしてくれなくなってしまうでしょう。
つまり、現実的な選択肢が減っていき、外的にも依存状態に陥ってしまうかもしれないのです。
そして、内的依存-外的依存の領域に陥ってしまうと、自分の意志で決めることができるようにならなければ、再び外的に自立するのが難しいといういうことは、既に書いたとおりです。
また、不必要な選択肢を手放すというようなことも、本人の意思・責任ではできないので、不必要な選択肢を維持するために大変な労力を費やさなければならないということもあるでしょう。(この例では、あまり当てはまらないかもしれませんが。)
- 内的自立-外的依存
この状態は、現実的な選択肢はひとつしかないけれども、自分の意志・責任で決定できる状態です。つまり、外的なレベルでは自由はありませんが、内的なレベルでは自由がある状態です。
ですから、本人が望めば、現実的な選択肢を増やすための努力をすることを、自分の意志・責任で選ぶことができます。
- 内的自立-外的自立
収入を得るための現実的な選択肢をたくさんもっていて、しかも、その選択肢の中から自分で選ぶことができるる状態です。内的なレベルでも、外的なレベルでも自由な状態と言えます。
また、この人は問題が起きてもその責任を他者に押し付けずに、自分のなかに原因を見出して改善する努力をしているので、能力が高まり、ますます自由を手に入れる可能性もあります。
もちろん、その選択肢が必要ないと思えば、自分の意思・責任で不要な選択肢を手放すこともできます。
もちろん、失敗してしまって、必要な選択肢を失ってしまったり、不必要な選択肢を手放せなかったりする可能性も否定はできません。ですが、内的自立の状態の人は、他者の指示がなくても、自分が居たいと思う領域に移動するための努力をすることができます。
このように、内的自立‐外的自立マトリクスを使って考えることによって、内的自立・外的自立という二つの考え方を組み合わせて、過不足なく、視覚的にわかりやすく考えることができると思います。
さて、これで経済的な自立と自由についてマトリクスの各領域ごとに、一通り例を示すことができました。この例がすべての場合に完璧に当てはまるかといえば、そんなことはないと思いますが、多くの場合に参考になると思います。
今回は、読者が自分で考えることを妨げないように、例を示すにとどめて、特に結論は出さずに終わりたいと思います。是非、「素直なこころと批判的思考」の精神で吟味してみてください。
あなたの「自立」についての理解は深まりましたか?
いままでの「自立を考えるシリーズ」では、記事の最後はまとめでしたが、今回は理解を深めるために、あなたに考えていただきたいことがあります。今回の記事では例として、内的自立‐外的自立マトリクスを使って経済的自立について考え、さらにそのときの自立と自由の関係について考えました。
同じように、あなたにも内的自立‐外的自立マトリクスを使って考えていただきたいのです。
自分の頭で考えることによってはじめて、その知識は自分のものになります。面倒がらずに、是非、実践してみてください。
内容はどんなものでも構いません。この記事と同じように経済的自立についてでも構いませんし、他のテーマでも構いません。また、自立と自由の関係に限らず、自立と成長の関係というようなテーマもいいかもしれません。
とにかく、内容は自由です。どんなことでも、興味があることについて考えてみてください。
書き込んで考えたい方のために、印刷用のPDFファイルも用意したので、もしよろしければご利用ください。
印刷用のPDFファイルをダウンロード
ところで、このシリーズの最初の記事「自立とは何か?【自立を考えるシリーズ1】」で、次のように書きました。
この「自立を考えるシリーズ」では、あなたが自立について考え、より深いレベルの理解に達し、その新しい理解の実践に向けての第一歩を踏み出してもらうきっかけを提供することを目的として書かれています。
この目的のうち、「あなたが自立について考え、より深いレベルの理解に達し」という部分はどの程度役に立ったでしょうか?
もしよろしければ、あなたが内的自立‐外的自立マトリクスを使って考えた結果、「自立についての理解は深まったか?」、「深まったとして、どのように考え方が変わったのか?」についてメールをいただければと思います。
メールはこちらから
今後の記事作りに活かしていきたいと思います。また、特にほかの読者の方にとっても役に立つようなメールをいただいた場合は、メールが記事になるかもしれません。
もちろん、内的自立・外的自立という考え方が納得いかないというような場合もあるかもしれません。そういう場合も、是非、ご意見をいただければと思います。
さて。これまでの「自立を考えるシリーズ」では、自立について考えてきました。
次回は、もうひとつの目的である、自立に向けての第一歩を踏み出してもらうためのきっかけを提供するためのヒントを書きたいと思います。
次回の記事:自立への道【自立を考えるシリーズ5】
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